理念の実践
九州文化学園と茶道
茶道教育のはじまり
九州文化学園は、第二次世界大戦の終戦直後の1945(昭和20)年12月に誕生しました。敗戦によって人心が荒廃し、貧しさ故の道徳意識の低下に創立者安部芳雄は日本の未来に危惧を持ったことが大きな動機となりました。
建学の精神(教育方針)にある「人間の誇るべき徳性と品格の香り高さ」という一節はそのような思いから生まれ、建学の精神を実践する教育として、茶道教育が確立されてきたと言えます。
創立者の安部芳雄は、1946(昭和21)年、平戸を中心に広まっていた武家茶道「鎮信流」へ入門。以来、約20年間にわたって研鑽を積み、1971(昭和46)年から教職員に茶道の手ほどきを始めました。こうして日本古来の礼節と品格を重んじる茶道教育は学園内へ広がっていったのです。現在では、本学園における教養教育の根幹となる講座として「茶道文化」が長崎短期大学、九州文化学園歯科衛生士学院、長崎国際大学に設置され、多くの学生が学んでいます。さらに、小・中学校には学びの特色の1つとして「日本文化教育(茶道)」があり、児童・生徒も茶道に親しんでいます。
そして2020年(令和2年)3月、長崎国際大学の茶室「自明堂」の横に茶道文化研究所を開設しました。現理事長の安部直樹自筆の濡額を掲げています。現在は、長崎国際大学を中心とした授業内容や行事内容の検討および実施や、小・中学校への教員や茶道専門家、学生補助員の派遣を行っていますが、今後は、九州文化学園全体の茶道教育に目を向けて活動していく予定です。これまで学園内で蓄積した茶道教育の学びを整理し、融合させて総合的な茶道教育を展開していくことができる環境を整え、さらに地域で活躍できる人材育成を目指し、伝統文化の存続と継承を見出していきたいと考えています。組織的には各部門で「茶道文化」の組織図を作成し、教育内容の相互交流のみならず、人的な交流も含めて計画してまいります。
なお、本学園内には、合計8施設の茶室および研修施設が配置されています。
九州文化学園茶室および研修所一覧
2022年10月1日現在
施設名 | 開設年 | 所在 | 概要 |
---|---|---|---|
耳順亭 松芳庵 |
1973(昭和48)年 | 佐世保市泉町 | 「耳順亭」数寄屋・母屋 「松芳庵」(6畳と2畳台目の席) |
洗心庵 | 1985(昭和60)年 | 長崎短期大学 九州文化学園高等学校 |
(50畳) |
不文軒 | 1992(平成4)年 | 長崎短期大学 | (112.5畳) |
不息庵 | 2000(平成12)年 | 長崎国際大学 | 広間・数寄屋(51畳)・水屋・外待合・蹲 |
自明堂 | 2006(平成18)年 | 長崎国際大学 | (106畳) |
微笑楼 | 2006(平成18)年 | 九州文化学園歯科衛生士学院 九州文化学園調理師専門学校 |
(50畳) |
わらべの間 | 2019(平成31)年 | 九州文化学園小学校 九州文化学園中学校 |
(13.5畳) |
茶道文化研究所 | 2020(令和2)年 | 長崎国際大学 |
「茶道文化」と
「ホスピタリティ」
「ホスピタリティ」の実現は本学園に共通する教育の要であり、その実践的な学びの根幹として「茶道文化」が位置付けられます。建学の精神を具現化した科目である「茶道文化」は、地元旧平戸藩主・松浦鎮信の興した武家茶道「鎮信流」を取り入れ、その中に表現される「おもてなしの心(ホスピタリティ)」について学んでいます。また、「茶道文化」の授業を通して、日本の伝統文化を再発見、再理解し、地元長崎県の文化・歴史に対する関心を高める役割も担っていると考えています。
長崎国際大学の「茶道文化」では、点前技術の習得を高めるために少人数教育を徹底しています。教員と茶道専門家だけでなく、補助員制度(SA)を導入して、「茶道文化ⅠA~ⅡB」の単位取得者の中から、特に熱心で、技量・品格等に優れた学生に研修を実施し、「茶道文化ⅠA~ⅡB」の授業サポート、及び後輩の指導に当てています。このような学生同士での学びあいは、双方にとって教育効果が高く、指導する上級生の「社会人基礎力」の育成にも役立っています。
また、茶道は日本の伝統文化でもあり、茶道を通じた地域交流、国際交流を通じた地域貢献、異文化交流へとつながります。
教育科目における「茶道文化」の位置づけ
本学園では、児童・生徒や学生だけではなく、教職員も「夜茶」と称して各部門で分かれて毎週月曜日から木曜日までの放課後に「耳順亭」、「洗心庵」、「自明堂」、「不息庵」、「わらへの閒」の各茶室でお茶の稽古をしています。特に、長崎短期大学と九州文化学園歯科衛生士学院では、「茶道文化」が必修科目でもあることから、全教職員が「茶道文化」の授業で点前指導に携わるようになっています。教職員自身の稽古が点前指導に大きく関わってくることから、「夜茶」の研修は欠かせないものとなっています。長崎国際大学は、茶道専門家が配置されておりますが、教職員も夜茶に参加し、本学園の茶道教育について興味関心を示す姿が見られます。茶室では、理事長や学長をはじめとする教職員の方々が集い、他学部の先生方との交流の場ともなっています。
学園内の教職員が集い、合同で開催する観月茶会では、九州文化学園調理師専門学校手作りの月見弁当が出るなど、茶道を中心に各部門の交流も行っています。また、初釜や松芳忌も含めて九州文化学園の行事と茶道は切り離せないものとして実施しています。
本学園が取り組んでいる伝統文化の継承、地域貢献・国際交流活動の紹介
茶道大会
1977年12月に安部芳雄のもとで第1回の茶道大会が玉屋デパートで開催され、1,000名を超す参加者がありました。その後、回を重ね、1981年~1993年の13年間は歯科衛生士学院の学生も加わり合同での茶道大会を行いました。また、1996年の第20回大会より韓国の釜山女子大学が参加し、韓国茶席を設けました。さらに、2007年から中国厦門大学嘉庚学院による中国茶芸、2009年からは台湾崇右技術学院による台湾茶芸が加わるなど、本学園における茶道文化の国際化が成り立ちました。毎年1,200~1,300名が参加する佐世保の風物詩のひとつにもなっています。
お茶ごっこ
本学園が50周年を迎えた際に、新たに始まったのが九州文化学園幼稚園の「お茶ごっこ」です。年中と年長を対象に、年に5回ずつ実施しており、通常の教室での学びと、お茶室での静かな行動を比較し、日常と非日常の体験を通してTPOの大切さを学んでもらうことを目的としています。当時は、矢岳校舎の3階にある茶室「微笑楼」で、きれいに靴を並べることから始めました。その後、長崎短期大学の茶室「不文軒」にて保護者と一緒にお茶を飲むという内容を行っていました。現在は、九州文化学園幼稚園の「ふれあいルーム」に畳を敷いて茶道体験をしており、季節の花に親しむこと、座布団の出し方やお年玉のいただき方など日本文化に触れることを組み入れています。
ハイスクール茶会 in ハウステンボス
2011年より、佐世保市を中心とする長崎県内および近隣の高校生が主体となる「ハイスクール茶会」をハウステンボスで開催してきました。長崎県内等の高校がハウステンボス各所(屋外テント)にて茶席を設け、お点前を披露しながら、観光客の方々にお呈茶を行うもので、高校生・大学生の双方で茶道を通じたコミュニケーションが生まれ、茶道に対する関心を高めることができています。流派を超えて茶道部員に「ハレ」の場を提供するという試みは、一応の成功を見ているものと考えています。2020年から2022年までは新型コロナウイルスの影響で中止となりましたが、2023年には記念すべき第10回の大会も開催することができました。今後もエリアを拡充しながら、地域文化の醸成につながるよう、継続していくことが重要と考えております。
開催実績
回 | 年度 | 開催日 | 参加校生徒数 | 呈茶数 |
---|---|---|---|---|
第10回 | 2023年度 | 5月20日(土) | 15校 150名 | 2,250名 |
― | 2022年度 | コロナ禍で中止 | ― | ― |
― | 2021年度 | コロナ禍で中止 | ― | ― | ― | 2020年度 | コロナ禍で中止 | ― | ― |
第9回 | 2019年度 | 5月18日(土) | 18校 234名 | 2,700名 |
第8回 | 2018年度 | 5月19日(土) | 19校 258名 | 2,850名 |
第7回 | 2017年度 | 5月20日(土) | 18校 281名 | 2,700名 |
第6回 | 2016年度 | 5月21日(土) | 17校 257名 | 2,550名 |
第5回 | 2015年度 | 5月23日(土) | 18校 314名 | 2,700名 |
第4回 | 2014年度 | 5月24日(土) | 17校 303名 | 2,550名 |
第3回 | 2013年度 | 5月26日(日) | 15校 327名 | 2,510名 |
第2回 | 2012年度 | 5月26日(土) | 14校 258名 | 1,800名 |
第1回 | 2011年度 | 5月28日(土) | 11校 120名 | 1,000名 |
NIUキッズキャンパス
地域の小学生を対象に、毎年11月に実施
波佐見茶会
長崎国際大学では、連携協定を結んでいる波佐見町の施設を活用して年2回実施
平戸訪問
九州文化学園中学校では、「鎮信流」発祥の平戸へ、松浦史料博物館と茶室「閑雲亭」を訪問
学園祭 茶席
長崎国際大学、長崎短期大学、歯科衛生士学院にて、学園祭で茶席を開催
カップリングカフェ&リカー
九州文化学園調理師専門学校で、日本茶や中国茶などについて講義