建学の精神
建学の精神 Philosophy
- 高い知性と豊かな教養
- 優れた徳性と品格
- たくましい意思と
健康な身体
設立趣旨の宣言
「吾人は今、祖国百年の彼方を凝視する。道義地に堕ちたる今、自由主義要請の風吹かんとする今、このまま推移せんか、祖国の道は哀亡への道に外ならない。吾人は今、ただ一本の道を信頼する。建設への道である。反省を乗り越えてゆく道である。次代継承者の熱情を湧き越し建設への意欲を高揚する道である。吾人は今、次代継承の女性を対象に考える。公民としての教養たるや、女性は零に等しい。与へられんとする政治的活動の分野を女性は如何に処理せんと欲するか。吾人は、この混迷に曙光をもたらし、叡知に輝く女性の出現を希求して、新日本建設に遺憾なからしめんと欲する。吾人は今、闇夜に北極星を仰ぐが如く炳乎として輝く不磨の大典、教育に関する勅語を仰ぐ。吾人は更に維新の黎明に際して賜りたる五箇条の御誓文を思ふ。旧来の陋習を打破し、天地の公道を闊歩すべく昂揚されたる精神こそ吾人が今、世に求めて止まぬ精神である。吾人は今、昂揚されたる精神の涵養を以て本学院第一の任務と宣言する。」と宣言文は述べられています。
創立者
安部 芳雄
創立当時の役員
- 佐世保商業銀行(前親和銀行、現十八親和銀行)頭取
- 北村 徳太郎
- 代議士
- 川副 隆
- 香蘭社社長
- 深川 栄左衛門
- 佐世保無尽専務取締役
- 大村 恕
創立者は、若冠32歳でした。創立当時の役員の顔ぶれも立派な方々で、学園設置に対する期待が伺われます。
––––– 「九州文化学園 創立70周年記念誌」より抜粋
歴代理事長
初代理事長(1951年~1978年)
安部芳雄
終戦後(昭和20(1945)年)、廃墟と化した佐世保の復興は「女子教育の充実しかない」との強し信念により学校設立を思い立った。当初は、人も人脈も資金も全てが不足している中で、自らが求める学校を模索していくには苦労もあったが、それをたゆまぬチャレンジ精神で乗り切っていった。そのバイタリティと活力の源泉は、教育という理念に無限の可能性を有していたに他ならない。64年間の人生は、思い立ったらすぐ行動に移すという行動力に支えられてきた。本学園の基本理念の中に、創立者が挑んできたイノベーションスピリットが色濃く残っている。小雪降る昭和53(1978)年1月31日、学園の一角で倒れ亡くなったことは本学園に永遠の魂を残されたのではないか。創立者の没後、本学の全ての学校で学祖追悼式、さらに教職員の夜茶研修、歯科衛生士学院、長崎短期大学、長崎国際大学では松芳(創立者の茶号)忌を設け、霊前で献茶を行っている。
2代理事長(1978年~1998年)
安部芳樹
高等学校の教頭、訓育主任、国際部主任、幼稚園主任、短期大学幼児教育学科主任、長崎国際大学教授を歴任、生涯、生徒・学生を重視し、現場サイドから学校改革に取り組んだ。幼稚園主任時代には、県内屈指の教育的評価の高い幼稚園に導き、高校では国際交流の推進に尽力、姉妹校締結や海外留学・研修制度を確立させ、国際化教育の原動力となった。また、教頭時代、公立から初の校長に就任した靍田校長とともに高校の組織改編に取り組み、高等学校の繁栄の礎を築いた。理事長を辞してからは、タイのスラム街へのボランティア活動に取り組むとともに西海市の地域活動に貢献した。温厚な人柄で、生徒をこよなく愛し、生徒とともに学び行動していく姿勢はまさに本校教員の模範となった。高校での離任式の際は、卒業生が多数訪れるなど、生徒に慕われた学園生活であった。令和6(2024)年2月3日早朝、80歳を迎えても、教育への情熱は廃することなく、前日まで非常勤ながら高校の教壇に立つなど心から九州文化学園を愛し、学園の未来に夢をかけ、その発展を願いながらご逝去された。
3代理事長(1998年~現在)
安部直樹
初代理事長が逝去した直後より、短期大学長、高等学校長等各部門長を兼任していたため、常に教育的視点から精力的に学校運営を推進、学園の発展に寄与してきた。初代、2代の理事長が築いた伝統を大切にしながらも時代や社会の要請に柔軟に対応し明日へ向かった学園の展望を開いてきた。特に平成18(2006)年に矢岳キャンパスが西九州自動車道のインターチェンジにより撤収されることになり、高等学校、歯科衛生士学院、調理師専修学校(当時)、幼稚園(当時)等を移転、それぞれの校舎、園舎の新築を行った。キャンパスが分散することにより本学園共通の理念が散々することを危惧し、各部門の教職員に茶道研修の場を設け、毎夜職員一人ひとりと胸襟を開いて話をするなど職員間の相互理解に努めた。茶道の「和敬清寂」を各部門の共通理念とし、九文グループのアイデンティティの再構築に努めた。常に前向きでバイタリティにあふれ、迅速で適切な判断力と行動力、人に対する細やかな心遣いで周囲を明るくする人柄である。また平成12(2000)年に公私協力型の大学である長崎国際大学(人間社会学部)を設立した。平成27(2015)年、3学部4学科、収容定員2000人を超える大学となり、平成24(2012)年4月から平成28(2016)年3月まで学長を兼任した。更に平成31(2019)年には小中一貫校となる九州文化学園小学校・中学校を開設し、幼稚園から大学までを抱える総合学園に発展させ、現在に至っている。令和6(2024)年春の叙勲において「旭日中綬章」を受章。
教育理念
学校を創立した昭和20(1945)年の日本は、「独立を失ったドイツが今のままだったら外国の権力によって牛耳られる」(「ドイツ国民に告ぐ」)と同じ状態にあったと、初代はフィヒテの言葉をひきあいにだして話すほど、カント、フィヒテなどドイツ哲学への関心も深く、ドイツ哲学と小原国芳氏の「全人教育」は、本学園教育理想形成の思想的背景となっています。
初代は、週一時間「校長倫理」の授業を全てのクラスで行っていました。「校長倫理」は教室か作法室で行われ、内容は「教育方針」の説明や礼儀作法の実践教育でした。1年生は生徒手帳に書いてある「教育方針」の頁を広げ、指名された生徒が音読し、その後、繰り返し全員黙読していました。1学期末の「校長倫理」の試験には「教育方針」を書く問題がだされ、解答を間違った生徒は、1人もいなかったと多くの先生が驚きとして語っています。
教育方法は、「校長倫理」の授業や巡視の時間に礼法、校則違反者には注意をうながし、徹底した躾教育を行い、教員に範を示し、率先垂範の本校の教育方法を実践していました。
「校長倫理」では、礼法の指導が「作法室」あり、その指導には学級主任(=担任)も必ず同席し、礼法を生徒とともに学び、生徒が名札や校章を忘れたり、「作法室」へ上がる際、靴が並んでいなかったりしたら、学級主任は校長室へ呼ばれ注意を受けていたといいます。
朝自習の際は、副週番長とともに各教室を巡回し、副週番長に学級の様子を尋ね、学級の状況を知るよすがとし、各学級で実践している学級経営(美化・掲示)を評価する参考にしていました。朝自習や清掃の際は、必ず生徒とともに各教室をはじめ清掃箇所を巡視し、師弟同行をむねとし、生涯教室に立ち、教育方針の具現化に努めていました。
2年生は、生徒手帳の「教育方針」が書かれている箇所を生徒は開き、創設者は、「教育方針」を板書して詳しく説明していました。
「高い知性」は「知」(知性)を、「豊かな情操の陶冶」は「情」(情操)を、「たくましい意志」は「意」(意志=実行力)を表現し、「知」・「情」・「意」のバランスのとれた人間になることを説いていました。
「教育方針」の中に、「徳性と品格の香り高さ」「健康な身体を養い」とある項目は、「徳」「体」を表しています。初代が校長だった時代は、陸上部の県下3連覇やソフトボール部の中体連優勝、ソフトボール部高体連準優勝の実績はあったが、現在のようにクラブ活動が盛んでなく、実践的にも重視されていなかったことから「体」には触れなかったと考えられます。高等学校の運動部の隆盛をみるにつけ、「健康な身体」の「体」の徳が具現化しているといえます。
ここに具現化された「体」が加わり「知」・「情」・「意」・「徳」・「体」の「教育理念」の具体化が図られたと考えられます。
全人教育を実践する教師は、生徒への範を示す存在と考えられ、感化作用による教育を理想としています。生徒の自主性を重視する主体性が教育方針に加わることで具体的には生徒との信頼関係に基づく教育が以前にもまして必要となっています。生徒の主体性は、教師と生徒の信頼関係に根差した助言や援助を通し養わなければならないとされています。
それゆえ人間教育を実践する教師には、生徒から尊敬されるよう絶えず自己を磨くことが要請されています。
本学園の教育理念は、知・情・意・徳・体を中心に、バランスのとれた人格の形成が教育理想で、生徒の主体性を育成し教師と生徒の人間的交わりを通し、信頼関係を築き教育することを中核としています。
平成18(2006)年4月、男女共学が復活した際、教育方針は「新しい女性が持たねばならない…」を「人間として大切な徳性と品格の香り高さ(以前からの知・情・意・徳・体)を身につけさせる」とした。さらに「広く国際的な視野に立ち…」の文言を入れ、これからのグローバル社会を生き抜く力等刻々と変化する社会情勢を見据え、国際的視野を持って物事を考え、行動できる人材の育成を目指す項目を付け加えました。
(新)教育方針
現代社会を主体的に生きるため、
広く国際的な視野に立ち、
高い知性と豊かな情操の陶冶に努め、
たくましい意志と健康な身体を養い、
さらに人間として大切な
徳性と品格の香り高さを
身につけさせようとする
独特の人間教育を行う。
[平成18(2006)年以降]
(旧)教育方針
新しい女性が持たねばならない
高い知性と豊かな教養と、
近代生活の改善に耐え得る
たくましい意志と健康な身体を養い、
更に日本女性の誇るべき
徳性と品格の香り高さを
身につけさせようとする
独特の人間教育を行う。
[平成17(2005)年まで]